ニフジ アキラ   Nifuji Akira
  二藤 彰
   所属   鶴見大学  歯学部 歯学科 薬理学
   職種   教授
研究期間 2003
研究課題 前立線癌の骨転移に関わるオステオポンチンの役割の解析
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 特定領域研究
科研費研究課題番号 15024221
キーワード 転移癌, BMP, 前立腺癌, オステオポンチン, 遺伝子発現, B16悪性黒色腫細胞, デキサメタゾン, 造骨性
代表分担区分 研究分担者
代表者 野田 政樹
概要 骨の転移を起こす癌の中で前立腺癌は現在我国において最も増加の著しい癌の一つである。前立腺癌が骨に転移を起こす際、そのメカニズムの詳細は現在も尚十分に明らかでない。オステオポンチンは骨基層に存在し、その欠損により既に我々が報告したようにB16悪性黒色腫細胞の転移が抑制され、さらに実験的な転移癌の骨以外の軟部組織、特に肺における転移についてもオステオポンチン欠損により実験的転移の抑制が観察されている。前立腺癌が骨においては特に造骨性の変化を伴うことから、オステオポンチンが前立腺癌細胞に発現しているか否かをホルモン非依存性増殖を示すヒト前立腺癌細胞PC-3を用いて検討した。PC-3細胞はオステオポンチンを発現しており、そのレベルはBMP、TGFβ、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、FGFなどには応答は見られなかったが、デキサメタゾンによる抑制が観察された。このデキサメタゾンのオステオポンチン発現抑制作用は時間依存性で24時間以内に観察され、48時間ならびに96時間のタイムポイントにおいてほぼ同様の抑制が観察された。さらに、デキサメタゾンのオステオポンチン遺伝子発現の抑制作用における用量依存性を検討した。その結果、10^<-8>および10^<-7>Mのデキサメタゾンの存在下で培養したPC-3前立腺癌細胞においてオステオポンチンのメッセンジャーRNAの発現は用量依存性に抑制されることが明らかとなった。この作用は薬理学的用量で観察されることからPC-3細胞におけるデキサメタゾンのオステオポンチン抑制作用は受容体依存性のものであり、またオステオポンチンの遺伝子上流にデキサメタゾンの配列が報告されていることからこの抑制作用が遺伝子発現の中で転写調節を介するものであることが推察された。これまで前立腺癌細胞の発現するオステオポンチンは患者の生命予後と逆相関することが知られており、その抑制的な制御を行う薬剤の作用が見出されたことは今後の治療手段構築に資することを示唆している。