ニフジ アキラ   Nifuji Akira
  二藤 彰
   所属   鶴見大学  歯学部 歯学科 薬理学
   職種   教授
研究期間 2001~2002
研究課題 BMPシグナル抑制因子による間葉系幹細胞から骨格系細胞への分化過程の制御
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 基盤研究(C)
科研費研究課題番号 13671895
キーワード BMP, 骨, 軟骨, 分化
代表分担区分 研究代表者
代表者 二藤 彰
概要 (1)noggin recombinant adenovirus(Ad/noggin)の作製 noggin遺伝子の強制発現を行うため、noggin recombinant adenovirus(Ad/noggin)を作製した。すなわちxenopus nogginをcomid vectorに組み込み、COS-TCP法により、リコンビナントアデノウイルスを作製、増幅した。C1細胞を用いて活性を調べたところmoi30の濃度で200ng/mlリコンビナントBMP2のALP上昇作用に対して完全な阻害効果を得た。(2)間葉系幹細胞C1へのAd/nogginの感染 C1細胞はテラトカルシノーマ由来の同葉系幹細胞であり、細胞培養条件によって軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、筋肉細胞にそれぞれ分化の振り分けを行うことができる。そこでまず、C1細胞が未分化な形質を保持している状態で、Ad/nogginを感染させ、それを2つのプールにわけた。まずひとつのブールから細胞凝集塊を形成させたのち、軟骨細胞に分化させ、表現形質の変化をコントロール(Ad/LacZを感染させたもの)と比べた。コントロールにおいてはtype II collagen、type X collagen、Sox9などの軟骨特異的な分子の発現が誘導されるのに対し、Ad/nogginを感染させたものにおいてはそれらの発現は抑制された。つぎに、別のプールについて、感染させたのちascorbic acidとbeta Glycerophosphate存在下で骨芽細胞に分化させ、コントロールと分化形質発現の変動の比較を行った。Alkaline Phosphataseやosteocalcinなどの骨芽細胞の分化形質に影響は及ぼさなかった。以上の結果から少なくともC1細胞の分化振り分けにおいてはAd/nogginが軟骨特異的に作用することが示唆された。(3)長管骨器官培養系における抑制分子の影響 次にIn vivoに近い環境下でも同様な効果が認められるか否か調べるために、器官培養系にけるnogginの影響を観察した。すなわちマウス胎児から15.5日胚の長管骨(上腕骨および大腿骨)原基を取り出し、nogginや他の抑制因子のアデノウイルスを濃縮して局所的に注入し、培養を続け内軟骨性骨化部位の軟骨と骨の成長を観察した。一匹の胎児から一組の長管骨をとりだし、片方にコントロールとしてLacZ遺伝子を、もう片方にnoggin遺伝子を強制発現させて成長を比較した。骨膜相当部における骨化の成長はコントロールと同様であったのに対し、軟骨での成長はnogginの強発現によって著しく抑制された。さらに骨化部の成長に対してより有利な培養条件として、長管骨をトリ卵の奬尿膜上で成長させたが、nogginの強制発現によって軟骨部は成長を阻害されたが、骨化部はコントロールとかわらなかった。したがってC1細胞の場合と同様、軟骨の分化に対して選択的な影響が観察された。(4)間葉系細胞の分化における他のBMPシグナル抑制因子の発現ならびに発現制御 現在までも、noggin以外にも多くのBMPシグナル抑制因子が報告されている。そのなかでchordin, tsg(twisted gastrulation),cerberusの発現が間葉系幹細胞C1並びに10T1/2において認められ、骨芽細胞への分化に伴い発現が上昇した。さらにそれらはBMPタンパクの添加により発現増強が認められ、多くのBMPシグナル抑制分子はリガンドからのシグナルによって発現の誘導が起こることが観察された。